用語の選択を慎重に

 文章は建築に例えられる。用語は建築資材である。同じ資材でも、礎石や柱は、文章でなら着想であり、段落である。用語は小さな資材―壁土、釘、なわ、板―である。

 いくら柱ばかり立派でも、細々とした資材の質が悪かったらよい建築はできない。

 用語を誤用すると読み手とのコミュニケーションに支障をきたすことになる。誤字などは不良資材だ。選択を誤ったため、読み手にあなたの考えていることが通じないのだ。

 だいたい考えてもみよう。人間の行う言語表現はきわめて不完全なものである。言語は人間の長い生活の歴史の中で発達してきたが、結局、約束事である。こういう時にはこういうことばを使おうと、いろいろの淘汰をへて今日のようになってきた。一つのことばを各人が違った解釈をしていては意思は通じない。だから一つのことばがもっとも普遍的な意味でどう使われているかを知らなければならない。それが国語の勉強というものであろう。

 わたしは考える―結局語感をつかむことだと。古典でも現代文でもよい。しかるべき人の書いた文章を読んで、その人と文章によるコミュニケーションをする。それがよい用語、正しい用語の選択を身につける唯一の方法である。

「大学生の作文・論文の基礎」(陣之内宣男) P103より引用

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