一方的になっていないか?

 多くの人は、正義のために理論を構築するのではなく、自分の気持ちに沿った理論展開を考えます。ですから、一見正論のようでも、よく検証してみると、裏に個人の欲望が潜んでいる場合があります。それが垣間見えると、読み手や聞き手の心は、たちまち離れていってしまいます。

 読み手や聞き手を納得させるためには、一方的な理論にならないように、注意しなければなりません。そのためには、話題にしている事柄のメリットとデメリット、プラス面とマイナス面、いいところと悪いところ、両面を公平に示す必要があります。

 新製品の利点ばかりまくしたてても、お客様は財布を取り出してくれなくなりました。他の商品と比較して、どういう点が良くなったのか、まったく変わらないところはどこか、あるいはそのためにこれまであった機能の一つが少し使いづらくなった、といったところが明示されなければ、納得しない消費者が増えました。

 車の加速が良くなれば、燃費は悪くなります。

 無農薬の野菜には、虫もつきます。

 何事も、後の喧嘩を先にしておくことが大事です。

 自分のメッセージのいいところだけ並べても、説得力はありません。特に、感情的になって書いた文章や話に心を寄せてくれる人はいません。そうだそうだと盛り上がってくれるのは、最初から同じ考えを持っている人たちです。同情を寄せてくれるのは、仲の良い家族化親しい友人ぐらいでしょう。

 事前に、自分の中で反対意見と対決しておくことが重要です。事前に反対意見と対決しておくことが、説得力のさらなるパワーアップにつながります。

 つまり、予想される反対意見や一般論に対する反論を示すことで、自説を強く主張できるということです。

 「確かに、これまでの終身雇用制を企業は維持できなくなってきた。また、成果主義を求める声が多いことも事実である。しかし、終身雇用制から成果主義へ一気に切り替えた結果、急速に業績を上げた企業がどれほどあるだろうか。あるいは、成果主義によって社員の満足度は向上したと断言できるだろうか」

 という具合に持っていけば、メッセージは強化されます。

 敵の力を利用する。古来より日本にある武術の真髄とも言える技です。

「書ける!話せる!31のパフォーマンスと実践」(有本隆) P112〜P114より引用

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