アイデアに個性を

 字数が千字前後の課題作文での勝負どころはアイデアである。その善し悪しで勝負が決まる。

 筆者の体験を語ろう。

 最近、「姿勢」という課題作文(千字・一時間)を百五十編ばかり採点した。多くの人は、左のような発想をしている。

 1 小学校のとき、先生から姿勢を正せと言われた。

 2 子どものころ、母親からも同じことを言われた。

 こうした発想をしたものが約半数ぐらいあった。1、2ともわかりきったことで、平々凡々の発想である。同じ発想がつづいていると、もうあまり読む気がしない。たった千字の文章に、小学校の思い出あたりに道草を食っていると先が心細い。

 「政治の姿勢」「生きる姿勢」「学問の姿勢」とか、いわゆる姿勢の抽象語から発想して、すぐに本論に入るべきである。ひどいものは「姿」とはすがたであり、「勢」とはいきおいであると、字義から説いている人がいる。この人はもうこれで落第である。そんなことは百も知っている上での出題である。読む相手は小中学の生徒ではない。

 アイデアについての例を「読書について」という課題作文に取ろう。よく出される課題である。

 この主題で、1番てっとり早いアイデアは、自分の読書遍歴である。読書の本質論などをやろうとすると、論旨が抽象的に傾いて、浮いた内容のものになってしまう。

 主題を「読書と人間形成」に絞ることもよいアイデアである。あるいは「ぼくの愛読書」「読書から得たもの」などと範囲を狭めることもよかろう。

 筆者に、とっておきの考えがある。

 それは主題を絞るために「サブ・タイトル」をつけることである。

 読書について―読書と人間形成

 しかし、これを答案用紙に書く必要は必ずしもない。アイデアとしてのことである。

 アイデアを決めるとは、内容の中心の柱とするものを決めるヒントをつかむことである。

「大学生の作文・論文の基礎」(陣ノ市宣男) P114〜P115り引用

ポトス ホームへ