スリムな文体にする

 スリムな文体にするには、厚化粧をしないことが大事だ。副詞・形容詞・接続詞はとかく厚化粧になりやすい。これらは使いすぎないほうがいいようだ。使いすぎるとどうしても太ってしまうのである。

 とりあえず次の例を見ていただこう。

 〈例〉

 もし仮に、研究者が研究着手手前にほんの一ヶ月でも、市場規模とか、本当にユーザーが欲している機能とか、何社ぐらい競合相手があって、自社の勝つポイントとかを真剣に調査・分析すれば、技術成功はしても、事業として成り立たないことが明白に推定されるテーマも多い。また、事業として成り立つチャンスがあるテーマは、そのための条件を推定できる。

 さらに、調査・分析だけだとハードウェアを必要としないだけ費用も安い。したがって実際に研究開発をする前に、事業として成功するかどうかの調査・分析をする習慣を研究者につけると、それだけでかなり、研究開発活動が効率化されると思われる。

 もちろん、基礎的テーマで、市場のみならず何が生まれるかわからないテーマについては、事業が成功するかどうか予測することはきわめて困難なので、そのようなテーマに研究費の何%を費やすべきかは、戦略的に決めるべきことである。

 傍線部は副詞(句)か接続詞である。こうした言葉は本当にいるだろうか。こころみに傍線部をとってみよう。

  研究者が研究着手手前に一ヶ月でも、市場規模とか、ユーザーが欲している機能とか、何社ぐらい競合相手があって、自社の勝つポイントとかを調査・分析すれば、技術成功はしても、事業として成り立たないことが推定されるテーマも多い。事業として成り立つチャンスがあるテーマは、そのための条件を推定できる。調査・分析だけだとハードウェアを必要としないだけ費用も安い。したがって、研究開発をする前に、事業として成功するかどうかの調査・分析をする習慣を研究者につけると、研究開発活動が効率化されると思われる。

 基礎的テーマで、市場のみならず何が生まれるかわからないテーマについては、事業が成功するかどうか予測することは困難なので、そのようなテーマに研究費の何%を費やすべきかは、戦略的に決めるべきことである。

 こうした言葉を機械的にけずっても立派に文章として成り立つことがわかる。これらがまったくいらないわけではないが、使いすぎるとぜい肉になるということだ。

 ここから一つの教えがくみとれる。接続詞・形容詞・副詞はほどほどにするのがいいのである。ありすぎるとうるさいが、なくても困る。コレステロールに善玉・悪玉があるようなものかもしれない。バランスが大事ということだろう。

「文章技術の心得」(浅野和彦) P87〜P89より引用

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