トピック選び

 研究する、論文を書くというしごとの第一の課題は、なにについて研究し、書くかというトピック選びです。

 そのトピック選びについてまず注意しなければならないのは、トピックとは「問題の場」ではないということです。「天皇制が問題だ」とか「福祉国家が問題だ」というようなことがよくいわれますが、天皇制も福祉国家もほんとうの問題、トピックではありません。それは「問題の場」、つまり、問題ないしトピックという宝石がかくされている鉱床のようなものです。

 論文のトピックとなるほんとうの問題は、一定の答えを要求するような問でなくてはなりません。それは「問題の場」という鉱床から切り出されてくるものですが、「問題の場」自体ではありません。「天皇制」「福祉国家」ではトピックになりませんが、「天皇制は民主主義の発展を阻止するか」、「福祉国家は国民の真の福祉に寄与するか」なら論文のトピックになります。

  「問題の場」から適当なトピックを引き出すのは、練習を重ねていれば自然にできるようになることですが、初心者のためにその過程を容易にする発想法的な補助手段があります。ギリシアの修辞家がトポイと呼んだその手段は、「なに」、「いかに」、「だれ」、「なぜ」、「比較」、「因果」だとという、話の手がかりのリストです。それによって「問題の場」のなかに含まれている、あらゆる可能な要素、問題、トピックをあらいざらい割り出して整理し、そのなかから自分の扱うトピックを選択するわけです。こうしておくと自分の選んだトピックのほかにどういうトピック、問題があるかが、はっきりし、関連問題を意識しながら自分のトピックを考えてゆけるという利点があります。

 もちろんこういう形式的な分析は、歴史的、具体的なトピックの切り出しに十分な手段とはいえませんが、それでも適当なヒントを与える手がかりになることがしばしばあります。「天皇制は民主主義の発展を阻止するか」、「福祉国家は国民の真の福祉に寄与するか」というトピックは、天皇制、福祉国家という概念にそれぞれ「なに」、「比較対立」という考えを適用して切り出したものです。

「論文の書き方」(澤田昭夫)P22〜P24より引用

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